「ひょっとしたら…」の時に知っておきたい、乳がんの初期症状・予防方法
乳首から分泌物が出る場合、乳がんのほかにも、さまざまな病気の可能性が考えられます。すぐに乳がんを疑うのではなく、まずは落ち着いて病院を受診するようにしましょう。
ここでは、乳首からの分泌物に関連する病気として、もっとも多く見られると言われる「乳管内乳頭腫」や、それ以外の病気について、それぞれ症状や原因等について詳しく解説しています。
乳首から分泌物が出る際に疑われる病気「乳管内乳頭腫」について、医療機関の情報を参照しながら詳しく確認してみましょう。
乳管内乳頭腫の症状について、京都にある乳腺外来専門の仁尾クリニックでは、次のように説明しています。
乳頭異常分泌、特に褐色や血液の混じった分泌が主症状で、乳頭近くに腫瘤を触れる場合もあります。また、乳頭から離れたところに発生することもあります。通常、痛みはありませんが、血性分泌の場合は痛む事があります。分泌物は、赤や茶褐色の血性が多いが、透明の場合もあります。液状のものが多いのですが、ゼリー状のものもあります。しぼらないとわからないものから、パッドが必要なほど多量にでるものまでいろいろです。
乳管内乳頭腫は、たて続けに多発する例も少なくありません。この多発した状態のことを、乳頭腫症と呼びます。
乳首から分泌物が生じる病気のうち約3割は、乳管内乳頭腫と言われています。多くの女性に見られる症状ですが、その原因は、現在のところ明確にはわかっていません。
というのも、乳管内乳頭腫は良性腫瘍の一種に分類されているため、治療の重要性は低いと考えられているのです。
乳管内乳頭腫自体は良性腫瘍なので、検査の目的は乳がんとの識別です。その方法としては、主に画像検査と分泌物検査が行われます。
マンモグラフィと超音波エコ−検査を行います。拡張乳管とその中に存在する腫瘤性病変として描出されますが、病変が小さい場合は画像検査で描出されないことがあります。また、非浸潤性乳管癌との鑑別が困難で、切除して初めて良悪性の診断が可能になる事も少なくありません。
また、乳腺外科での診療実績が豊富な小山記念病院(茨城)の公式HPでは、MRI検査によって乳頭腫と乳癌との識別を行っている、との記載があります。
第1に分泌物の細胞診を行ないます。腫瘤や石灰化を認めれば、その部位の穿刺細胞診を行います。細胞診では良悪性の診断しか出来ない事も多く、IDPと診断するのは困難です。第2に潜血反応を行います。当院のデータでは血液反応が3+の強陽性であれば、IDPか乳癌の可能性が高くなります。第3に分泌物中CEA測定を行います。CEAは癌細胞が産生する腫瘍マーカーで、分泌物が微量なため、免疫泳動法によるマンモテックという検査を行います。
かつて乳管内乳頭腫と乳がんの識別検査は、乳頭にチューブを挿入する乳管造影という方法が採られていました。この検査法は患者に著しい苦痛をもたらすことで知られていましたが、現在では高解像度CTやMRIによって同等レベルの検査結果を得ることができるため、乳管造影が行われることはほとんどありません。
各種の検査を通じ、その症状が乳管内乳頭腫であると診断がつけば治療の必要はありません。ただし、悪性の可能性を否定できない場合には、組織を切除したり、または切除生検を行ったりすることになります。
小山記念病院では、腫瘍が悪性か良性かを識別できない場合、切除手術をする例が多いとしています。
良性であると診断がついた場合には経過観察でよいとされていますが、実際に細胞診はおろか組織診でもがんと見分けることが難しいことから、当院ではMRIを行い悪性の可能性が否定できないときには、手術をおすすめすることが多いです。
同様の検査結果だった場合、仁尾クリニックでは切除生検を行っています。
以上のような検査で悪性の可能性が否定できない場合、診断と治療を兼ねて切除生検を行います。(中略)IDPの存在する拡張乳管を乳頭直下から乳管拡張の広がっている範囲までを切除します。(中略)範囲が狭い場合は局所麻酔のみで手術が可能ですが、広い範囲の場合は全身麻酔が必要な場合もあります。
乳管内乳頭腫の癌化リスクは低いと考えられています。この点について、仁尾クリニックの解説を引用します。
IDP(乳管内乳頭腫)自体は良性ですが、10年ぐらいの間に1割ぐらいの割合で乳癌が発症するとされています。当院ではIDPの疑いで切除すると2割程度に乳癌(非浸潤性乳管癌や乳管内乳頭癌)が見られます。IDPが乳癌に進行するのか、IDPの近くに乳癌が併発するのかは現在のところ解明されていません。
また同院では、多発性の乳管内乳頭腫の癌化リスクについて、次のように解説しています。
IDPが乳管に沿って数珠つなぎに多発性に発症する乳頭腫症では、切除すると一部に非浸潤性乳管癌や異型乳管過形成が存在する事も多く、将来の乳癌発症の可能性もあります。以上の様に、IDPまたはIDPの疑いと診断された場合は、定期検査が必要です。
乳管内乳頭腫が癌化するリスクは低いものの、定期検査は怠らないようにしたほうが良いでしょう。
乳首から分泌物が出る症状について、乳がんや乳管内乳頭腫以外の病気も見てみましょう。
両側から多量に分泌液がでるときには、「脳下垂体腫瘍」というまれな病気が原因となっている場合があるため、検査を要します。
脳下垂体腫瘍とは、脳腫瘍の一種。ホルモン分泌の異常等が原因となり発症することのある病気です。 通常、開頭手術は行われず、鼻から脳下垂体に向かってアプローチする「ハーディの手術」と呼ばれる方法で治療します。
エストロゲン(女性ホルモン)の過剰分泌により、乳腺症という症状を発症することがあります。乳腺症は、乳房のしこりや痛みなどが見られるのが特徴ですが、患者の中には乳首からの分泌物が見られる例も少なくありません。
癌化のリスクは少なく、一般には治療不要で経過観察のみです。
乳腺が細菌感染を起こし炎症が生じるのが乳腺炎。乳汁が詰まったり、乳首が傷ついたりすることなどが原因で発症します。抗生剤や抗菌剤で治療を行いますが、重症化して乳輪下に膿がたまった場合には、外科手術で治療を行うこともあります。
当記事は、小山記念病院(茨城)、乳腺外来仁尾クリニック(京都)、相原病院ブレストセンター(大阪)、中頭病院(沖縄)が公表している情報を参照して作成させていただきました。
院長 | 田中 直見 |
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所在地 | 茨城県鹿嶋市厨5-1-2 |
TEL | 0299-85-1111 |
受付時間 | 8:30~(乳腺外科) ※詳細は要確認 |
休診日 | 月、水、土、日(乳腺外科) |
小山記念病院は、茨城県鹿嶋市にある昭和44年開院の病院。内科や外科などの一般的な診療科のほかに、乳腺外科や歯科口腔外科など合計20の診療科を有する総合病院です。2017年度、乳がん手術は58件、乳房抗がん剤治療実績は329件と、胃がん・大腸がんに次いで乳がんの治療実績が豊富です。
1991年、日本医科大学医学部卒業。小山記念病院乳腺外科で唯一常勤しているドクター。日本乳癌学会乳腺専門医、マンモグラフィ検診精度管理中央委員会A認定読影医、日本外科学会外科専門医などの専門医資格を持つ乳房診療のエキスパートです。
院長 | 仁尾 義則 |
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所在地 | 京都市中京区西堀川通三条上ル姉西堀川町511 ハロー友愛ビル1F・2F |
TEL | 075-803-0111 |
診療時間 | 午前診9:00~/夜診18:00~ |
休診日 | 土曜午後・日曜等 ※詳細はクリニックに直接お問合せください。 |
乳腺外来仁尾クリニックは、2008年4月に開院した乳腺外来専門のクリニック。京都で初めてOSNA(癌遺伝子解析システム)やCAD(乳腺撮影コンピューター検出支援システム)を導入するなど、関西圏における乳癌治療の先駆けを行く医療機関として知られています。乳腺疾患の専門医が4名常勤。
1976年、京都大学医学部卒業。同大学医学部外科と赤穂市民病院外科への勤務を経て、京都大学大学院にて外科腫瘍学を専攻。のちアメリカUCLA留学を経て、京都大学助手、島根大学助教授等を歴任したのち2008年より現職に就任しています。2016年までの手術実績4,810件のうち、2,870件は乳腺疾患に対する手術です。日本外科学会、日本乳癌学会等の専門医資格を所持しています。
院長 | 相原 智彦 |
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所在地 | 大阪府箕面市牧落3-4-30 |
TEL | 072-723-9012 |
診療時間 | 9:00~11:30 |
休診日 | 水、金、日(隔週) |
相原病院ブレストセンターは、乳がん診療や乳がん手術など、乳房の疾患を専門的に行っているクリニック。年間の乳がん手術件数は100件以上と、北大阪にある公的病院と同レベルの実績を持つ医療機関です。院長含め3名の乳腺外科専門医が、各患者の症状に応じてオーダーメイドで治療を行っています。
1991年、大阪大学医学部卒業。同大学附属病院、大阪府立成人病センター、関西労災病院等の乳腺外科勤務を経て現職に就任。これまでの乳癌手術件数が1,000件を超えるベテランドクターです。日本乳癌学会乳腺専門医・指導医・評議員、日本外科学会専門医・指導医、検診マンモグラフィ読影A判定など、乳腺外科に関連する専門医資格を多く所持しています。
院長 | 下地 勉 |
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所在地 | 沖縄県沖縄市字登川610 |
TEL | 098‐939‐1300 |
受付時間 | 8:00~17:00 |
休診日 | 土曜午後、日曜、祝日、年末年始 |
中頭病院は、循環器科、脳神経外科、産婦人科、乳腺科など28の診療科を擁する沖縄市の総合病院。「救急医療体制の充実、高度急性期医療の推進、集学的がん治療の構築」をコンセプトに、最新の医療知識・技術の導入を積極的に行っている病院です。乳腺外科には4名の乳腺外来専門医が常勤しています。
1990年、琉球大学医学部卒業。乳がんの臨床件数や乳がんに関する研究論文が豊富なドクターです。海外の学会でも論文を多数発表した実績があり、日本乳癌学会専門医、日本がん学会認定医、マンモグラフィ読影認定医師、日本外科学会専門医・指導医でもあります。
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