「ひょっとしたら…」の時に知っておきたい、乳がんの初期症状・予防方法

このしこりは乳がん?初期症状かもと不安な人の乳がん予防ガイド

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乳房のしこりが現れる乳がん以外の病気

乳房にしこりができたからと言って、かならずしも乳がんとは限りません。むしろ、乳房のしこりの約90%は、乳がんとは異なる別の病気と言われています。まずは、落ち着いて病院を受診するようにしてください。

乳房にしこりができる病気には様々なものがあります。それらの中でも特に多く見られる「乳腺症」をはじめ、乳房のしこりに関連する様々な病気について、それぞれ症状・原因・治療法について知っておきましょう。

乳がんと間違えやすい「乳腺症」とは?

乳がんと間違えやすいとされる病気の一つに、乳腺症があります。乳腺症の症状や原因、治療法などについて具体的に見てみましょう。

乳腺症の症状

乳腺症とは、主に30~40代の女性に見られる乳房の疾患の一つ。主な症状として、乳房の痛み、しこりなどが見られます。両方の乳房に症状が現れることもあれば、片方の乳房にのみ症状が現れることもあります。

乳腺炎の痛みの程度は患者によって異なりますが、中には、歩行中の振動だけでも痛いという女性もいるようです。また、一般に月経前に痛みが強くなり、月経が始まると痛みが軽減する、とも言われています。症状が進行した場合には、月経周期とは無関係に年中乳房が痛むことがあります。

なお、症状は乳がんと似ているものの、乳腺症は良性の症状とされています。乳腺症と診断された場合、過剰に心配する必要はありません。

乳腺症の原因

乳腺症の原因は女性ホルモンのバランスの乱れ。卵巣から分泌されている女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類がありますが、これらのうちエストロゲンの分泌料が過剰になったとき、乳腺症を発症することがあるとされています。

エストロゲンには、乳管(乳が通る管)や間質(乳管の周りの結合組織)を刺激し、当該組織を大きくする働きがあります。組織周辺の血流量も増加して乳房がパンパンに張り、結果、乳房の痛みやしこりが生じる、というメカニズムです。

乳腺症の治療法

乳腺症は良性の症状なので、特に治療をしなくても問題はありません。癌に発展する恐れもないので、基本的には経過観察で十分です。

なお、乳腺症を発症している乳房の内部では、嚢胞と呼ばれる水たまりのような部分が生じています。この嚢胞が大きくなりすぎると痛みが強く現れてしまうため、患者の希望や状態に応じ、乳房の中にたまった水を吸引する処置を行うことがあります。

癌化のリスクはほとんどない

乳がんと同じようなしこりを感じたとしても、乳腺症は良性の症状。エストロゲンの過剰分泌が原因で乳房に痛みを生じるという意味では、正常とは異なる状態とも言えますが、医学的には治療の必要がない「正常な状態」とされており、厳密には病気でもありません。

癌化のリスクが僅かにあると指摘する意見もありますが、大半の医師は、乳腺症には癌化のリスクはほとんどないとの見解を採っています。

症状を和らげる方法

癌化のリスクがほとんどない、良性の症状とは言え、日常的に乳房の痛みを生じる乳腺炎は、患者にとっては不快なものです。少しでも乳房の痛みを和らげるために、乳腺症と診断された方は、以下の点に注意して過ごすようにしましょう。

痛みを緩和させる食事を摂る

脂肪の多い食事内容は、乳腺症の痛みを増大させると言われています。脂肪分の少ない食事を心がけるようにしてください。カフェインの摂取も乳腺症の痛みを加速させる原因と指摘されているので、コーヒーやお茶の飲みすぎには注意しましょう。

また、海藻などに多く含まれるヨードを摂取することで、乳腺症の痛みが和らぐとの報告も見られます。

生活習慣を見直す

あらゆる病気の症状を悪化させると言われるストレス。乳腺炎の痛みもまた、ストレスによって大きくなると言われています。痛みを強く感じるときには、無理をせずに休息をとることも大切でしょう。

また、睡眠不足も乳腺症の痛みを強くすると言われているため、毎日、十分な睡眠をとることが大切です。

乳房のしこりが現れるその他の病気

乳がんや乳腺症以外にも、乳房にしこりが現れることのある病気があります。それらのうち代表的な病気について、症状・原因・治療法を見てみましょう。

乳腺炎

症状

乳房に、しこりや赤み、腫れ、痛みなどが生じます。また、全身症状として発熱が見られる場合もあります。陥没乳頭の方や喫煙者の場合、乳輪の下に膿が溜まることもあります(乳輪下膿瘍)。

乳腺炎と乳腺症は、名前はとても似ていますが、まったく別々の病気なので区別して覚えておいいてください。

原因

乳腺の細菌感染が原因です。乳汁が乳腺で詰まったり、また、授乳中に乳頭が傷ついてしまったりすることが原因で、乳腺に細菌が侵入して増殖。乳腺炎の発症へとつがなります。

治療法

抗生剤や抗菌剤を用い、殺菌治療を行います。乳輪の下に膿が溜まってしまった場合には、抗生剤等では治りにくいこともあるたば、症状に応じ外科手術で膿を取り除くこともあります。

線維腺腫

症状

乳房の中に生じた良性腫瘍。主に20~40代の女性に多く見られる病気です。小さな球形のしこりで、触るとコロコロと動くのが特徴です。痛みなどの自覚症状はありません。

しこりは年齢とともに成長しますが、その成長スピードは非常に緩やか。成長が途中で止まることもあります。また閉経後には、しこりは小さくなっていくとも言われています。

原因

閉経とともにしこりが小さくなることから、原因として、女性ホルモンとの関連が指摘されています。

治療法

良性腫瘍なので、基本的には治療不要です。ただし、まれに急速に巨大化する例も見られるため、その場合には外科手術で腫瘍を取り除くこともあります。

葉状腫瘍

症状

30~50代の女性に見られることが多く、急速に成長することが多い点が特徴です。比較的な稀な症状ですが、しこりの増大速度が早い場合には葉状腫瘍が疑われます。

良性、悪性、良性と悪性の中間(境界病変)、の3つに分類されます。悪性の場合には他の部位に転移する恐れがあるので、注意しなければなりません。

原因

現状、明らかな発生原因はわかっていません。

治療法

外科手術により腫瘍を摘出します。転移や再発のリスクを低下させるため、腫瘍の周辺組織もあわせて摘出します。

乳管内乳頭腫

症状

乳管内に見られる良性腫瘍。乳頭に近い場所に生じる傾向があり、30代後半~50代に多く見られます。腫瘍のしこり以外にも、乳頭から血液の混じった赤黒い分泌物が生じることがあります。

原因

原因は不明です。乳がんとの関連を指摘する専門家も少なくないため、乳管内乳頭腫と診断された方は注意が必要です。

治療法

悪性が疑われる場合には、外科手術によって切除します。悪性ではない例においても、手術によって摘出される例が多く見られます。

脂肪壊死

症状

硬いしこりや、乳房のくぼみなどが見られることがあります。乳房が大きな女性に発症する傾向があり、乳がんとの区別が難しいとされる症状でもあります。

原因

乳房の打撲等による脂肪細胞の壊死が原因で発症します。

治療法

治療は必要ありません。放置しても、癌化する恐れはありません。ただし、乳がんに非常に良く似た症状を呈するため、正確に診断してもらう必要があります。

記事の参考にさせていただいた医療機関

当記事は、キッコーマン総合病院(千葉)、東海大学医学部外科学系乳腺内分泌外科(神奈川)、公立甲賀病院(滋賀)、八尾総合病院(富山)が公表している情報を参照して作成させていただきました。

キッコーマン総合病院

キッコーマン総合病院
http://hospital.kikkoman.co.jp/index.html
院長 久保田 芳郎
所在地 千葉県野田市宮崎100
TEL 04-7123-5911
受付時間 8:00-11:00 / 13:00-15:00
休診日 日曜、祝日、お盆休み(8/13-8/15)年末年始(12/30-1/4)

キッコーマン総合病院は、野田の醤油で有名なキッコーマンが経営母体となる総合病院。食品会社が経営する全国唯一の病院です。診療科は、内科や外科、脳神経外科、産婦人科など14種類。乳腺に関する疾患は外科で診療しています。1862年(文久2年)設立の「養生所」を前身とする、国内有数の歴史を持っています。

外科(乳腺外科・消化器外科) 仁禮貴子

2004年、信州大学医学部卒業。診療だけでなく、学会における論文発表や研究活動にも熱心なドクター。乳腺外科を主要な専門とし、ほかにも大腸を中心とした消化器外科の経験も豊富。日本外科学会専門医、マンモグラフィ検診制度管理中央委員会読影認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医でもあります。

東海大学医学部外科学系乳腺内分泌外科

東海大学医学部外科学系乳腺内分泌外科
http://mamma.med.u-tokai.ac.jp/
院長 新倉 直樹
所在地 神奈川県伊勢原市下糟屋143
TEL 0463-93-1121
受付時間 要確認
休診日 要確認

東海大学医学部外科学系乳腺内分泌外科は、乳腺の悪性疾患から良性疾患まで、乳腺に関する病気を専門的に診療している医療機関。2017年の手術症例は412件(うち全身麻酔下での乳癌手術は325件)と、単一の診療科としては際立った実績を持つ病院です。同科には乳腺専門医3名のほかに、がん薬物療法専門医4名が在籍。早期に乳がんを克服させ、一刻も早い患者の社会復帰を支援しています。

教授 新倉直樹医師

2002年、東海大学医学部卒業。同大学にて7年にわたり外科医としての経験を積んだのち、アメリカ・テキサス大学に1年4ヵ月留学。帰国後、大学に復職して豊富な症例を蓄積したのち、若くして教授に就任。日本乳癌学会専門医、検診マンモグラフィ読影認定医、日本外科学会外科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法指導医・専門医などの専門資格を保有。

公立甲賀病院

公立甲賀病院
http://www.kohka-hp.or.jp/
院長 清水 和也
所在地 滋賀県甲賀市水口町松尾1256
TEL 0748-62-0234
受付時間 一般診療 8:~11:30
専門外来 13:00~15:00
休診日 土曜、日曜、祝日、年末年始

公立甲賀病院は、1939年に開院した滋賀県でも歴史のある総合病院。2013年に新築移転し、現在、34の診療科を構える地元有数の大病院です。チーム医療と救急医療を積極的に実践する医療機関です。乳腺外科には6名の専門医が常勤しています。

院長代行・乳腺外科主任部長 沖野孝医師

1979年に医学部卒業。専門は乳腺外科、がん免疫、緩和ケア。日本乳癌学会専門医・指導医、日本外科学会専門医・指導医などの乳腺外科に関連する専門資格を保有するとともに、滋賀県乳腺・マンモグラフィ研究会世話人や、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会乳房再建責任医師を務めるなど、乳房疾患に関連する様々な活動を行っています。

八尾総合病院

※八尾総合病院乳腺外科は、2018年2月より富山西総合病院(同一の医療法人)にて診療を行っています

八尾総合病院
http://yatsuo.or.jp/
院長 安川 透
所在地 富山県富山市八尾町福島7-42
TEL 076-454-5000
診療時間 要確認
休診日 要確認

八尾総合病院は、内科や外科、消化器科など16の診療科を持つ富山市の総合病院。診断や治療だけではなく、治療後の患者の社会復帰の支援に熱心な病院として知られます。乳腺外科は、2018年より同じ医療法人藤聖会が運営する富山西総合病院にて診療中。なお同医療法人は、患者の社会復帰を支援する富山西リハビリテーション病院も運営しています。

富山西総合病院副院長 江嵐充治医師

1989年、金沢大学医学部卒業。同大学附属病院、富山県営津中央病院、上市厚生病院、富山労災病院等の外科勤務を経て、2003年、八尾総合病院に入職。2018年より、同じ医療法人である富山西総合病院にて診療しています。専門は乳腺外科。患者の話をよく聞くことをモットーとしているドクターです。日本乳癌学会や日本外科学会等の専門医・指導医資格を保有。

参考サイト

八尾総合病院ブレストケアセンター「乳腺症と診断された患者様へ」[pdf]

キッコーマン総合病院「乳腺症」

東海大学医学部外科学系乳腺内分泌外科「乳房の良性の病気にはどのようなものがあるでしょう?」

公立甲賀病院「乳がん以外の乳腺疾患」

日本乳癌学会「Q7. 乳房のしこりの診断はどのようにするのですか。がん以外の乳房のしこりにはどのようなものが ありますか。」

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